ウィッグだったから、助かった話

20代のとき、友人と下呂温泉に行きまして。

かれこれ20年くらい前の話です。
当時から旅が好きで、ひとりでもふたりでも(大勢の旅行は苦手)、ふらりとどっかに出かけることがよくありました。

その時の旅の動機は「ゲロ温泉って、面白い名前だから行ってみよう」ということだけ。
素泊まりの宿を電話予約して、友人(女性ですよ)とふたり電車でトコトコお出かけしました。

よく言えば鄙びた、悪く言えばボロい民宿

電話予約の時点で薄々気づいてはいたんですが。

耳が遠いおじいさんとおばあさんが、ふたりで細々(ほそぼそ)と経営されている民宿でした。
薄暗いフロントで鍵を渡され、長い廊下の突き当たりのお部屋を案内されました。
建物が古く、また増改築を繰り返してこられたのでしょう。消防署から叱られそうな複雑な動線の、離れの一角にお部屋がありました。

お部屋については、特に不満もなく。
飲んべえふたり旅だったので、早速温泉街に繰り出し、居酒屋とスナックをハシゴして夜10時くらいに部屋に戻りました。

おや、お隣の部屋に宿泊客が

夕方、居酒屋に出かける前には気がつかなかったんですが。
お隣の部屋が騒がしい。
どうやら、20代前半と思しき若者たちがお酒を持ち込んで騒いでいるようです。

友人は、お風呂に入る前に酔いつぶれて寝てしまいました。でもせっかくの温泉ですし、といそいそと準備をして、これまた離れたところにある浴場へひとり向かいました。

今なら、「志村!うしろ、うしろ!」と言えますが、当時は、本当に危機感ゼロでした。

女湯に押しかけてきましたよ、若者5人。

他の宿泊客を見かけることもなく、母屋に引っ込んだままであろうおじいさんおばあさんに会うこともなく、宿の浴場にたどり着いて「ふんふんふ〜ん♩」と服を脱ぎ、体を洗っていたら…。

やってきましたよ、ぞろぞろと。
全裸の若者たちが。
「おねえさん、一緒にお風呂入ろ〜♪」って。

なかなかの絶体絶命なシチュエーション

「やっちまった!」
と、思いましたね。油断しすぎた。
若者たちの下半身は、もうやる気満々。

先に書いた通り、他に宿泊客はおそらくおらず、経営者ご夫妻は耳が遠い上に別棟でおやすみの模様。
下手に叫んで助けを求めても誰もきてくれないばかりか、若者たちにコロコロされる(婉曲的に言ってみました)可能性だってある。

「何を言っているんだ、ここは女湯だ、君らが来る場所ではない、あっちへ行け、しっしっ」などと抵抗し、「おねえさん、おもしろーい」と言われ、「どこから来たのか」「なぜここに泊まっているのか」などと若者たちを質問責めにして誤魔化すことができたのもほんの数分。

ウィッグ、会心の一撃

もう、いいから、いいことしようよー!

と、リーダー格の金髪が私の後ろから抱きつこうとした、その時。

ウィッグが、落ちました。ズリッと、後ろに。

こうなったら、私のターンである

時間が、止まりました。


ハゲで全裸の私は沈黙の中立ち上がり、脱衣所へ。

若者たちを並べて正座させ、こんこんと説教しました。

  • いったい自分たちが何をやっているかわかっているのか
  • こんな状況で複数の男とヤルことを女性が望んでいるとでも思っているのか
  • AVの見過ぎだ、もっとためになるものも見ろ、本を読め
  • さっき、君たちがどこから来たのか、どういう関係なのか聞き出したのは、コトが起きたらあとで警察へ情報を提供するためだ
  • 今回は被害もないから警察には言わない、部屋に帰るから手伝え
  • 若者たちの下半身は、もうかわいそうなくらい、しょんぼりしてしまいました。

    真似しないでね。こういう状況にならないよう、気をつけよう

    部屋に帰ると、何も知らない友人がグースカ寝ていました。

    そして、お隣の部屋も、その後はお通夜のように静かだったのでした。

    ハゲとウィッグには悩まされてばかりの私の人生でしたが、この件については「ウィッグ、グッジョブ!」です。
    20年前ということで、現在私がつけているような引っ張っても落ちないウィッグではなく、かぶるだけの、落ちやすいウィッグだった頃のお話です。

    まとめとも言えない、まとめ。

    言うまでもないことですが、危機感なさすぎな私が招いたことでもあるわけです。
    これを読んでいる女性の皆様におかれましては、まずはこのような状況にならないよう、自衛を心掛けられますことをお願い申し上げます。

    あと、下呂温泉はとても良いところでした!!!と、これは声を大にして言いたいです。
    河原の露天風呂と情緒あふれる温泉街。そして飛騨牛の美味しさやスナックのママさんが「ちろり」で出してくれた地酒の熱燗などなど、しみじみと心に残る、良い旅でした。あまりに良いところなので、この後も3回ほど訪れています。
    この事件、下呂温泉という場所柄とはまったく関係ありません。