ウィッグの構造:髪の密度と、アホ毛について

寝ても覚めても頭から離れないヘアロスによるウィッグの悩みに寄り添いたい、ウィッグリリアの島袋です。
今回は「ウィッグの髪の密度」と「ウィッグにアホ毛があるというお話」の二本立てです。

レースウィッグの髪の密度と「アホ毛」

ベースのレース全体に髪が結びつけてありますが、その密度は場所によって変えてあります。

フルレースウィッグを例に出して、髪の密度についてお話しします(フルレースウィッグの構造やメリット/デメリットについては【ウィッグの種類】その2:人毛のレースフロントウィッグとフルレースウィッグをご参照ください)。

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図の中央部は伸縮性のあるレースで、その周囲は透明感のあるレースです。どちらにも毛髪がきっちり結びつけてあります。ただ、その密度は場所によって違いがあります。詳しく見ていきましょう。

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上図のように、頭頂部周辺は密度が濃く、後頭部はその半分程度の密度です。密度の高い順からとなっています。

頭頂部を薄くしてしまうと、ウィッグであることがばれやすくなってしまうため、頭頂部とその周辺は密度を濃くしてあります。

後頭部は密度を下げて軽めにしてある一方で、襟足や耳の後ろの生え際は密集した感じを出してあります。そのため、襟足を出すヘアスタイルでも、ベースのレースが見えにくくなっているのです。

また、額やもみあげなどは細めの毛髪を一本どりにして産毛を再現してあります。この細やかな仕事はすべて、機械ではなく人の手で作り上げたものです。

リターン毛(もう)について

アホ毛、てありますよね。
短めの毛がぴょんぴょん飛び出て、セットする際に邪魔な、あれです。

ウィッグなら、アホ毛で悩むことはなくなるんじゃないか…、そう思いますよね。
それが、どんなウィッグにもアホ毛があるんです。しかも、なんと全体の毛量の半分がアホ毛なんです。

なぜそのようなことになっているのでしょうか。下図をご覧ください。

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※イラストはわかりやすくするためにシングルノット(ひとつ結び)で描いていますが、実際のウィッグはダブルノット(固結び)で結びつけられており、より強固で解けにくくなっています。
※また、イラストでは髪を一本だけ使用していますので「密度の違い」の図で言うと③の、「一つの結び目から2本生えている状態」となります。

結び目を境にして、毛髪が「長いほう」と「短いほう」に分かれます。
「長いほう」がメインの髪で、キューティクルの方向も正しく、「短いほう」がいわゆるアホ毛でキューティクルの向きも逆になっています。

この、「短いほう」の毛髪を、「リターン毛(もう)」と呼びます。長さはだいたい5センチから10センチ弱です。メインの髪一本につき、必ず一本のリターン毛が発生します。

レースフロントウィッグの場合

レース部分は、フルレースウィッグと同じです。

レース部分は、基本フルレースウィッグと同じです。髪の密度は、生え際のみで、あとのレース部分はの密度となります。
では、ヘアウェフト部分のリターン毛はどうなっているのかを見てみましょう。

ヘアウェフト部分はリターン毛が短いため、目立ちません。

ヘアウェフトは、毛髪の束を平たくして折り曲げ、きっちり縫い合わせたものです。このヘアウェフトにも一応リターン毛(アホ毛)があります。

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折り曲げた、短い部分がやはり「アホ毛(リターン毛)」となっています。しかしながらリターン毛が短いのと、ヘアウェフトを使用しているのが後頭部のみなので、ほとんど目立ちません
また、フルレースウィッグと比較して、この部分の髪の密度が特に濃いわけでもありません。

リターン毛、切ってはダメ?

切るのはお勧めできません。

リターン毛、邪魔ですよね。でも、根元あたりまで切ってしまうと結び目が弱くなって解けやすくなり、せっかくの毛髪を早く失うことにつながります。

また、根元までではなく1〜2センチほど残して切るのはどうか、とお思いになるかもしれませんが、そうなるとぴょんぴょんどころかチクチクしてしまうので、こちらもあまりお勧めできません。

帽子、アイロン、ドライヤーをうまく使って

頭がボリューミー問題の記事にもありますように、頭頂付近のボリュームは帽子やウィッグキャップを被せてクセを付けたり、ドライヤーの温風で寝かせることでほぼ改善します。

リターン毛も、同じくドライヤーで寝かせたり、ヘアアイロンやヘアワックスをうまく使って飛び出さないように工夫してみてください。

ウィッグだったら髪の悩みがすべて解決するかと思いきや、こういう風に自毛と同じような悩みが出てくるのが、ウィッグの(困るけれど)可愛い部分、と前向きに捉えています。

しかしながら、海外人毛ウィッグ産業の世界では日進月歩で様々なウィッグベースに様々な植え方(結び方)が研究開発されているところです。アホ毛のないウィッグができる日も近いのでは、と期待しながら日々最新の情報をチェックしています。